観劇

[スタッフブログ] [東御店]

6月某日、舞台鑑賞のため東京へ行きました。何の舞台を観に行ったのかというと、ブラウザゲーム『文豪とアルケミスト』が原作の、いわゆる2.5次元舞台というものです。「2.5次元」とは、ゲームやアニメの2次元作品をもとにした、演劇やミュージカルなどの3次元作品を指して使われる言葉です。2次元と3次元の融合なので2.5次元。アニメ・ゲーム文化が根付いている日本ならではの言葉だと思います。

今回観に行った「文豪とアルケミスト」とは、タイトルに「文豪」とあるように、著名な本を残した小説家たちをメインに据えたゲームです。突然本が黒く塗りつぶされ消えてしまうようになった世界。その「浸食」に対抗すべく、文学の持つ力をよく知る文豪を転生させ、本の浸食を食い止める。という話です。

ゲームにはたくさんの文豪がキャラクターとして実装されていますが、今回の舞台に抜擢されたのは「白樺派」「プロレタリア文学」に関する文豪です。「白樺派」とは人道主義や理想主義などをもつ作家たちが、雑誌「白樺」に集まったことで呼ばれるようになりました。今回は志賀直哉、武者小路実篤、有島武郎、里見弴が登場しました。また「プロレタリア文学」とは労働運動の立場に立つことが特徴の文学で、蟹漁とその加工を行う下層労働者たちの労働実態を再現した小林多喜二著の蟹工船が有名かと思います。舞台では小林多喜二を敵の侵食者たちから救出して転生させるというストーリーでした。

志賀と小林の生前の交流を軸にした展開や、里見の『善心悪心』にまつわる曰くについてなど史実を元に解釈を添えたストーリーが面白かったです。そのほか、文豪たちの著作や小ネタを知っているとさらに楽しめました。たとえば石川啄木の「働けどはたらけどなお、わがくらし楽にならざり」をもじって「倒してもたおしてもなお、わが敵いなくならざり」みたいな台詞があったり、広津和郎が真面目だけれど抜けてたりすること(著書で登場人物の名前を途中で急に違う名前にしたことがある)など。あと、舞台ならではの凝った演出や派手な殺陣なども見ていてとても楽しめました。役者さんやアンサンブルのみなさん本当にすごかったです。

6月で公演は全て終了してしまいましたが、大千秋楽では次回8作目の制作決定の発表もあり、今から次はどのようなものになるのか楽しみです。


PS 東京公演はシアターHという会場だったのですが、シアターHは今年の6月にオープンしたばかりの劇場で文豪とアルケミストの舞台がこけら落とし公演だったそうです。こけら落としの大切な公演に文劇を選んでいただけて光栄でした。


                                        

薬剤師 古田